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「警察……」
城崎先生の顔が暗くなる。
「俺が行った方が早く済みますよね?なら、俺が行ってくるので安心してください!」
「でも…俺は行かせたくない。」
「なぜですか?」
「…それは……何か、嫌な予感がするから……」
「……」
城崎先生がこんな深刻な顔をするのは初めて見る。
「俺も行くよ、ちょっと待ってて。」
そう言って城崎先生はベッドから出て支度を始める。けど、城崎先生の体調はまだ優れないらしく、座り込んでしまった。
「城崎先生!やっぱり、1人で行ってきますよ!城崎先生、まだ体調万全じゃないみたいだし…。」
「…わりぃ……気をつけて…な……」
そう言って、城崎先生は眠ってしまった。気をつけるって…どういう事?とりあえず俺は、警察署に向かった。
警察署に着いて、中に入る。
「あの、すみません。」
「ん?君、もしかして維網君!?」
1人の警察官が俺に近づいてくる。
「え?あぁ…はい……」
「よかった、あの男から逃げてきたんだね?」
「もしかして…城崎先生の事ですか?」
「あぁ、あの男は誘拐などしていないと言うが、どうも怪しくてな。やっぱり誘拐だったか。」
何で…?城崎先生はそんな事しないのに…この人、一体何を考えてるの?
「城崎先生は…誘拐などしていませんよ。」
「何…?」
「父親が死んで、居場所がなくなった俺を唯一助けてくれたのが…城崎先生なんです。だから、誘拐なんてしていません。信じてください。」
「……」
警察官は、俺を睨んでいる。けど、事実を述べているんだし間違った事は言ってない。俺も警察官を睨み返す。
「…分かった。」
やっと認めてくれた!そう思っていたが……
「君はどうやら夢を見ているんだ。」
「…え?何を言って……」
「城崎貴史という夢を見ているんだ。…いや、悪夢と言った方が正しいかな。」
「ちょ…ちょっと待ってください!何言ってるんですか!夢って…」
「その名の通りだ。君は夢を見すぎている。君には現実を見てもらわないとな。」
その瞬間、俺の口元を布で押さえつけられる。
「…んっ…んんんっ!」
「さぁ、現実の世界へようこそ。」
視界がぼやける。何か、頭が変…。俺…一体何が……。倒れる前に、俺は警察官が口にした言葉をぼんやりと聞いた。「君はとても可愛い。俺と共にしよう。」……と。
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