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第6章 監禁
貴史side
「…梓…大丈夫かな……」
俺はベッドで寝っ転がりながら、独り言を言っていた。あの警察官がどうも怪しくて、梓1人だけ行かせてしまって大丈夫か不安で仕方なかった。すると、保健室のドアが開いた。
「城崎先生、具合はいかがですか?」
保健の斎藤先生が来た。
「あ…大分体が楽になりました。ご迷惑おかけしてすみません。」
「大丈夫ですよ。体調が良くなって何よりです。でも、まだ体調は万全ではないですよね?日も沈んでいますし、今日は早く帰ってゆっくりしてください。」
「すみません、そうさせていただきます。」
ベッドから出て、帰る支度をする。
「お先に失礼します。」
「気をつけてくださいね。」
「はい。」
学校を出て目的地に向かう。
警察署に着いて中に入る。すると、署長が1人だけで働いていた。
「おや、あなたは城崎さん。どうかしましたか?」
「あの…梓……維網、ここに来ていませんか?」
「維網君?さぁ…私は見ていませんね。」
「え?でも、あいつはここに来たはずなんです。」
「んー……他の人が担当でついて、もう帰ったのかもしれませんが……とりあえず、今日いた全員に電話をかけて聞いてみます。そこの椅子に座って少々お待ちください。」
「……はい。」
言われたとおりにして、椅子に座って待つ。署長の電話の声で、今の所は誰も見ていないし来てもいないみたいだ。どうしよう…嫌な予感しかしなかった。数分後、署長が電話を終えて戻って来た。
「あの、どうでした?」
「残念ながら、目撃した人はいませんでした。」
やっぱり……予想していた通りだ。
「ですが…」
署長は続けた。
「畠山だけが、どうも言葉を濁していて若干怪しい雰囲気がありましたね。」
「畠山……?あ…。」
その名字に見覚えがあった。俺の事情聴取をしていたあの男だった。
「あの、その畠山の家の住所って分かります…?」
「畠山の家の住所か……。確かここに…」
そう言って署長は、ここの警察署で働いている人達全員分の事が書かれた名簿らしいものを取り出し、調べてくれた。
「えーと、あ、あったよ。畠山の家はここだ。」
「ありがとうございます。」
お礼を言って、俺は署を出た。そして、教えてもらった住所の場所に辿り着いた。随分昔に建てられたらしいアパートの中に入り、305号室のチャイムを鳴らした。けど、畠山は出てこなかった。
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