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「何で出てこないんだよ……」
いくら鳴らしても、誰も出てこない。やっぱり怪しい…。どうしようかと悩んでいると…
「あの、どうかなさいましたか?」
若い女性が俺に話しかけてきた。
「あ…えっと…ここの、畠山さん?に用事があって……」
苦笑いしながら、そう言うと女性は暗い声で言った。
「畠山さんなら、ここにはもういませんよ。」
「……え?」
「一ヶ月前に、引っ越して行ったらしいんです。まぁ、私は畠山さんとは関わりたくなかったので一回も挨拶に行ってないんですけどね。」
「あの…引っ越した場所って分かりませんか?」
「…すみません、私も分からないです。何しろ、急に引っ越して行ったものですから。」
「そうですか。」
その後俺はここの大家さんに聞いてみたが、あの女性と同じような反応で手応えはなかった。そのマンションを出て、どうしようかと悩んでいるとご年配の男性が俺に近寄ってきた。
「お兄さん、どうしたんだい?こんな夜に。」
「あ、すみません。畠山という男を探しているんですけど見つからなくて。」
「畠山?それって、この近くの警察署で働いている畠山か?」
「はい…。」
この人…何か知ってるのかと思っていると、男性はメモに何かを書き始めた。
「あの人は確か、ここの場所に引っ越したはずだよ。」
そう言われてメモを受け取って見ると、体が震えた。
「う…嘘だろ……?本当に…本当にここなんですか!?」
「あぁ…私はあの方と話したことがあってな。引っ越す時にも、どこに行くのかを問い詰めたらこの場所だったよ。」
「…そうですか。ありがとうございます。」
お礼を言って、急いでメモの場所に向かった。まさか、こんなに近くの場所にいたなんて……!メモの場所は、俺の住んでいるマンションの隣の家だった。でもあの家…誰も住んでる気配がなかったのに……。息が切れながらも、その場所に着いてチャイムを鳴らす。けど誰も出てこない。
「畠山さん、いるんですよね?出てきてください。」
そう言いかけるが、出てくる気配はしない。舌打ちをして無理矢理ドアを開けようとすると、すんなり開いた。
「…え?」
どうやら鍵をかけていなかったらしい。まぁ開いて助かった。静かに中に入っていく。すると男の声が聞こえた。聞いたことのある声に寒気がした。恐る恐る声のする部屋に行くと、そこには傷だらけの梓と、気味の悪い笑みを浮かべる畠山がいた。
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