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梓side
目が覚めると、景色が真っ黒だった。手足も拘束されていて、一体どうなっているのか分からない。助けを呼ぼうにも、口元をガムテープで塞がれていて呼ぶことが出来ない。どうしよう……。すると、ドアの開く音がした。
「そろそろ目覚ましたか?」
声からして男の人っぽかった。そして、辺りが急に明るくなった。そして、目の前にいた男は、あの時警察署で俺と話した警察官だった。
「よぉ、維網君。やっと目覚ましたみてぇだな。」
「……」
俺はその警察官を睨んだ。そして拘束されてる手と足を解こうとする。
「そんなのやっても無駄だぞ?ほら、さっさと何か喋ろ。」
そう言って、彼は俺の口元についてるガムテープを思いっきりとった。凄く痛かった…。けどそんなことは気にせず、俺は怒りを彼にぶつける。
「何なんですか、ここは!それに、手も足も拘束してるし!あなたは一体何がしたいんですか!?早く家に帰らせてください!!」
「ちっ、うるせぇーなー」
「……っ!」
思いっきりみぞおちを蹴られた。
「っが……はぁっ…はぁっ……」
ゆっくり息を整えるが、腹の痛みが激しい…。
「どうした?何とか言えよ、なぁ?」
「……」
「おい、聞いてんのか?」
そう言って、次は顔を殴られる。かなり強烈だ。歯がとれるかと思うくらい。
「家に…帰らせてください……」
それが、今精一杯言える言葉だった。
「嫌だね。っていうか、君に帰る家なんてないだろう?」
「……あり…ます…。」
「どうせ、城崎の家のことだろ?あいつの家なんか、お前の家じゃねぇ。いいか?今日からここが、お前の家だよ。存分に可愛がってあげるからね。」
「違う…俺はっ……!」
そう言いかけた時、突然、俺の体が暗く鈍色に染まっていく感覚がした。あぁ、そうだ。俺の家はここだ。間違いない…。そんなことしか考えられなくなった。
「おい、何とか言えよ。」
「……ここが、俺の家…なんですよね……?」
「おう、そうだ。これからたっぷり愛情を注いでやろう。」
それから、殴られたり蹴られたり、変な薬を飲まされたりした。けど、これが愛情だと思うと不思議と快感を感じた。俺は…ここで一生暮らすんだ…そう思っていた時、玄関の近くで音がした。何だろうと思っていると突然ドアが開いて、1人の男の人が入ってきた。そして、今にも人を殺しそうな目で俺を見ていた。
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