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俺の脳裏に、ふと彼とのことが思い出される。そうだ、いつもこの人は俺の隣にいてくれた。いつもいつも…。そんな彼のことをどうして、俺は忘れていたんだろう。忘れたくない人…一番大切な人…。俺の…
唯一無二の存在
「てめぇなんて、こうしてやる!!」
気づけば、彼は男に殴られそうにいた。そして、俺の体は無意識に彼の前に立ち、彼を庇って殴られていた。
「あ、梓っ!?」
殴られた衝撃で、歯が抜けた。血も出てる。それでも俺は気にせずに、男に近づいて行った。
「な、何だよ…何なんだよ!!殴られてぇのかてめぇは!!」
「別に、殴ってもいいよ?でも…。」
俺は男のみぞおちを狙って、腹を蹴った。
「城崎先生には、手を出すな。」
男は苦しみながら、その場で倒れた。どうやら気絶したようだ。
「梓!大丈夫か!?」
「城崎先生…俺なら大丈夫ですよ。」
「けど…お前、血出てるし」
そう言って、城崎先生は俺の口元を優しく触る。痛くないように触ってくれてるのかな…やっぱり、城崎先生は優しい。そう思うと、目頭が熱くなってきた。
「大丈夫ですよ、これくらい…俺、男だし……。」
俺は、今にも泣きそうな顔を見られたくなくて視線をそらしながら言う。すると、城崎先生が後ろから抱きついてきた。
「え…城崎…先生……?」
「無理するなよ…お前が傷つけられてるの見たら、俺だって傷つくんだから……それに、色々心配したんだからな…?」
城崎先生の手が震えてる。それに、声を押し殺して泣いている。そして俺も涙が溢れ出して止まらなかった。
「ごめ…なさい…ごめんなさい……俺…迷惑かけて……城崎先生のことまで…忘れてしまって……ごめんなさい……」
「梓…。こっち向け。」
振り向いて城崎先生を見ると、城崎先生は涙を流していた。そして、俺の顔に近づいて軽くキスをする。キスが終わって唇を離し、城崎先生が続ける。
「俺は…梓が無事で何よりだよ。俺のこと忘れたのも仕方ないって思ってる。あいつが飲ませたあの薬が原因だろうし…。梓…お前は俺にとって、唯一無二の存在だ。誰よりも大切で、特別。お前ほど大切な人なんていない。だから、ずっと一緒にいてくれ。」
城崎先生は力強く俺を抱きしめる。そして、俺も口を開く。
「ずっと一緒になんて…当たり前じゃないですか。俺も城崎先生のこと、凄く大切で特別で…唯一無二の存在なんですから。」
そして、長い夜は幕を閉じた。
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