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第7章 貴史の婚約者
家に帰ってきてすぐに、俺は城崎先生に手当をしてもらった。
「梓…大丈夫か?顔真っ青だけど。」
「…だ、大丈夫です。少し気持ち的にあまり良くなくて……」
「そうだな…俺も、あいつにすっげぇ腹たってるし、お前のそんな姿…今も見るだけで辛くなる。もう少し早く、お前のことを助けられていたら…少しは違っただろうに……」
「そんなことありません。城崎先生が助けに来てくれなかったら、俺は自分自身壊れていたと思うので。」
そう言って、城崎先生に軽くキスをする。
「梓…。」
城崎先生が近くに寄ってくる。
「…何ですか?」
「……俺の名前…呼んでくれない…か?」
「えっ…?」
急に体全体が熱くなってくる。名前呼びなんてしたこともなかった。
「で、でもっ!教師と生徒という立場だから、そんな名前呼びなんて、出来ないです。」
「俺は今でも、生徒を名前で呼んでるけど?梓だけだけど。」
「……っ!」
そ、そうだったー!どうしようどうしよう!?そんな…いきなり名前で呼んでなんて……できっこないよー!!すると、城崎先生はいきなり耳元で小声で囁いた。
「梓…。」
「……!?」
俺の顔は余計に真っ赤になる。自分の名前を呼ばれただけでこんなに赤くなるなんて…。それに、自分の名前なのに、凄く特別に感じる。城崎先生も…俺と同じ気持ちになるのかな…?城崎先生の顔を見て、意を決して言う。
「……た……貴史…さん………」
やっと言えた!けど、どんな反応するのかな?怖くて目をつぶって俯く。すると、城崎先生が俺の体をそっと抱きしめる。
「ありがとう…とっても嬉しいよ。梓。」
「……っ!」
城崎先生の顔を見ると、優しく微笑んでいた。良かった…。俺は安心して城崎先生を強く抱きしめる。
「え…梓…!?」
「貴史さん…俺の怪我のこと…考えて優しく抱きしめてくれてるんですよね?」
「あ…当たり前だろ?痛んだら嫌だから。」
「大丈夫ですよ、少し痛くても…貴史さんになら、強く抱きしめられても平気です。むしろ…強く抱きしめてほしいです。」
「……分かった。」
すると、城崎先生の抱きしめる力が強くなる。怪我の痛みは、まだ少し痛む。けど、愛されてる実感がして凄く嬉しくなった。けれど…そんな幸せは、今日だけで終わってしまうことを、この時の俺は想像していなかった。
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