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「……っ!」
かなり痛かった。それに、昨日の痛みもまだ残っていて尚更痛かった。やっぱり…俺のことを愛してくれる人なんて…もう、いないんだな……。そう思っていると、城崎先生が無言のまま俺を抱きしめた。
「……!」
力強かった。昨日よりもずっと……。そして城崎先生は口を開いた。
「……何でだよ…何で何も言わねぇんだよ……!!」
「…え?」
「本当は殴りたくなかったのに…お前を傷つけたくなかったのに……どうして…どうして何も言ってくれないんだよ!!」
城崎先生は、体を震わせながら泣いていた。こんな先生、見たことがなかった。
「城崎…先生……」
数分ほどで、先生は落ち着き俺を離した。
「もう…いいよ。お前にとって俺は…どうでもいい存在だったんだな。……帰る。じゃあな、維網。」
名字呼びに戻っていた。そして城崎先生は立ち去っていく。何で…何で城崎先生の方が傷ついたみたいな表情なの…!?そう思っているうちに、無意識に体が城崎先生の方に近づいて行く。そして、背後から抱きしめた。そして俺は口を開く。
「それはこっちの台詞ですよ、馬鹿っ!」
「は…はぁ!?」
「城崎先生…婚約者さんがいるくせに、俺と付き合って…どういうつもりなんですか!俺とはただの遊びだったって言うんですか!?そりゃそうですよね!あんな美人な女の人が婚約者だったら、当然俺なんか釣り合いませんし…そもそも男だし…!俺は…こんなにも……あなたのことが好きになってしまったのに……!」
泣かないつもりだったのに泣いてしまうなんて…情けない…。あまりの情けなさに俯く。すると、突然顔を上げさせられキスをされる。
「……!?」
城崎先生は口を離して続ける。
「心彩はただの幼なじみで、婚約者じゃねぇよ。昔、俺らの両親が冗談半分で婚約したら?とか言ってきたけど、別に婚約はしてねぇし。」
何だ…勘違いだったのか…。ホッと安心する中で城崎先生は続ける。
「それに…梓は可愛いよ。誰よりも…。俺の最高の恋人だよ。結婚するなら好きな人がいいし、梓以外考えられない。」
その言葉に、俺は嬉しくなった。そんな風に思ってもらえてるなんて思ってもみなかった。と同時に罪悪感も感じて謝る。
「ごめんなさい…俺、勝手に早とちりして…迷惑かけて……」
「もういいよ。俺こそ、殴ってごめんな。」
そしてお互い笑顔が戻った。
「梓、愛してるよ。」
「俺もです。」
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