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貴史side
俺は、梓と一緒に家に帰った。途中でゲリラ豪雨が降ってきて、服がびしょ濡れになった。
「すげぇ濡れたな。梓、大丈夫か?」
「大丈夫で……くしゅんっ!」
「雨で濡れたから冷えたか?風呂に入らないとな。それにしても、もう少し髪拭いた方が……」
梓の髪がまだ濡れていて、拭いてあげようと思って手を近づけると、勢いよく叩かれた。
「……あ。」
梓の顔は真っ青のまま小声で呟く。さっき、俺が梓の腕を壁に打ち付けてしまったから、叩かれるのも仕方ない。
「…ごめん、あんなことして。触られるの嫌だよな。もうお前の嫌なことはしないから。あ…先に風呂に入って来い。俺はリビングで適当に暇潰しするから。」
俺は、濡れた髪を拭きながらリビングに向かう。すると突然腕をひかれた。振り向くと、梓が俺の腕を掴んでいた。
「…梓?」
「あ、あのっ!俺なら…大丈夫ですから!だからその……い…一緒に…入りませんか……?」
「え…?」
予想外の言葉だった。あんなことされたのに平気なはずがない。体もまだ震えてるのに…。そして梓は続ける。
「その状態のままじゃ、貴史さんも風邪引いちゃいますよ。俺のことは気にせずに、一緒に入りましょう!」
「けどお前、体震わせてる。まだ俺のことが怖いんだろう?無理しなくていいよ。一人で入って来い。」
「大丈夫ですよ!こんなの!入りましょう!!」
そう言って、梓は俺の腕をとったままぐいぐいと風呂場に連れていく。渋々服を脱ぎ、風呂の中に入る。シャワーだけでいいやと思っていると、梓が無理やり風呂の中に入れられた。そして梓も風呂につかる。しばらく静寂が訪れる。すると、梓が口を開く。
「あの…貴史さん…。」
「どうした?」
「その…近くに行ってもいいですか?」
「…いいけど。」
すると、梓は俺の元に近寄って来た。と同時に俺に抱きついた。
「…梓……」
「貴史さんって…意外と頑固なんですね。大丈夫って言ってるのに。」
ムスッとした表情の梓。
「大丈夫って言ってるけど、お前の体が震えていて大丈夫そうじゃなかったから言ったんだよ。それなのに無理して…」
「無理なんかしていません!まだちょっとだけ怖いですけど…でも、愛してることに限りはなかったから……。」
「俺も同じ気持ちだよ、梓。俺の場合、お前のことが大切で愛しているからこそ、これ以上お前の嫌がることはしたくないって思った。」
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