第7章 貴史の婚約者

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心彩との電話を終えて、俺は電話を切る。…参ったな…このままだとまずい…。父さんを首にされたら父さんに迷惑かける。それだけは避けたい。それに父さんと心彩のお父さんは最近仲良くなっているし、俺たちのことで父さん達の仲を悪くさせたくない。でも、梓と別れたくない…。一体どうしたらいいんだ…。俺は頭を抱え込み必死に考えた。どれが正解なのか…。一晩考え込んだが、今日は正解が出せなかった。 「貴史さ~ん!朝ですよ~!」 「……ん…」 目を開けると、制服を着た梓がいた。 「梓…?」 「早くしないと遅れちゃいますよ?」 「あぁ…悪ぃ……」 「それにしても、珍しいですね。陸さんが机で寝ているなんて。夜遅くまでお仕事してたんですか?」 「あー…ちょっとな。」 俺は少し苦笑しながらそう言った。梓に昨日の出来事を言えない。 「そうですか。俺、今日友人と学校に早めに行って勉強することになってるので、そろそろ行きますね。それじゃあ行ってきます。」 「あぁ、行ってらっしゃい。」 梓はすぐに俺の部屋を出ていった。梓は…俺が心彩と婚約することを知ったら、どういう顔をするんだろう?嫌がる?泣く?案外平気?それとも…傷ついた顔?分からない。頭ん中がぐちゃぐちゃになりそう。こんな状態で授業なんて出来ない。俺は部屋を出て、家の電話から学校に連絡をした。 「もしもし…」 「城崎先生?どうかなさいましたか?」 「あの…すみません…今日、体調が優れなくて…申し訳ないんですが休みます。」 「そうでしたか。分かりました。お大事にしてくださいね。」 「ありがとうございます…」 そう言って電話を切る。 「はぁ……」 しばらく、俺は電話の前で俯いた。 「ただいまー、貴史さんいるんですよね~?」 梓の声…今日学校に行ってないから、顔合わせたくないな……。俺はベッドの中に蹲る。すると、部屋のドアをノックする音がする。そしてすぐにドアが開いた。 「入っていいですか?」 いやもう、堂々と入ってますけど…?そう思いながらも、俺はベッドの中で蹲ったままで梓の声を聞いた。 「今日、貴史さんの変わりに別の先生が来て授業したんですけど…貴史さん、体調悪かったんですか?」 「……違う…」 「じゃあ、何でですか?何で来なかったんですか?」
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