第7章 貴史の婚約者

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まぁ…昨日あんなこと言われて平常だっていう方がおかしいけど。怒っただろうな…。やっぱり言わないほうがよかったかもしれない。そんなことを思いながら授業を始める。 「今日は教科書の132ページからやってくぞ。板書していくからノートとれよ。」 そう言って、俺は黒板に板書をしていく。すると、一人の生徒が俺を呼んだ。 「先生っ…」 「ん?どうした?」 「それ…前回やった範囲です。」 「えっ…」 見ると、生徒の言う通りだった。 「あー…ごめんごめん。違うページ開いてた。」 上手く笑えてたかな?笑えてなかった気がする。そう思いつつ、気を取り直して授業を続ける。一通り今日の授業の説明をした後、教科書問題を前に解きに来てもらうのが俺なりのやり方だ。決め方は生徒の出席番号が書かれた紙をランダムでひいて当てる。 「よし、じゃあ今から番号ひくから当たったやつは前に解答しに来て。」 しばらくは梓の番号ひきたくないな…。そう思いながら紙をひいていく。24番、19番、31番……。最後の紙を引くと、2番…梓の番号だった。 「24番江山、19番横山、31番佐々木、2番維網、前に来て書いて。」 俺に呼ばれた生徒達が前に書きに来る。そして、梓も……。いたたまれなくなり、俺は他の生徒の解答を見に回る。 「先生っ…」 「どうした?」 「ここ、分からないんですけど……」 「…あぁ…ここは……」 分からない生徒の質問に答えてあげていると、黒板での解答組が終わった。 「先生、終わりました。」 江山さんが代表して言いに来てくれた。 「ありがとう。もう、席に戻ってて大丈夫だよ。」 そう言うと、その四人は自分の席に戻って行った。その後、問題の解説をして今日の授業は終わった。今日ずっと…梓と目が合わなかった。何か、苦しい…胸が苦しい…締め付けられるような感覚…。こんな感覚…初めてだ。 学校での勤務を終えて、俺はある所に向かった。スイートホテルだ。学校を終えた後、心彩からメールが来ていた。その内容が、スイートホテルに来いとのことだった。重い足取りのまま、スイートホテルに向かう。着くと、心彩がロビーにいた。 「あ、やっと来た!遅いよ~!!」 「…何か用?婚約の件に関してなら、もういいでしょ?」 「違うの。今日呼んだのはこれよ。」 そう言って心彩が俺に見せたのは、梓との写真だった。
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