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第2章 父親の英才教育
俺と城崎先生が出会って2ヶ月が過ぎた。毎日がとても楽しくて、つまらないと思っていた学校生活が楽しいと思えるほどになった。
「じゃあ、12日の9時に駅集合な。」
「はい。俺、凄く楽しみです!」
「俺もだよ。じゃあ、授業あるからまた後でな。」
「はい。」
本当はもう少し一緒に居たかった。でも授業があるから仕方ないと思いながら、教室に戻ろうとした時、携帯が鳴った。見ると父親からの電話だった。渋々電話に出る。
「…もしもし、父さん……?うん…うん……えっ…」
外は土砂降りの雨で…まるで、今の俺の心の中みたいだった。
俺は重い足取りで教室に戻った。さっきまであんなに高まっていた気持ちがまるで嘘みたいだ。
「梓、今週はずっと取引先との食事会だから予定を空けておけ。維網家の格を下げるような真似は絶対にするなよ。」
まさか、こんなに早く食事会なんて…現実に引き戻された感じだ…。帰りたくないな……。
「維網、いるか?」
気づくと廊下に城崎先生がいた。女子達がきゃーきゃー騒いでいて、城崎先生を取り囲む。
「先生ー、今日こそ一緒に帰りましょうよー!」
「あっずるいー!先生、私もー!」
「ごめんね、今日は仕事忙しいから一緒に帰ることは出来ないな。」
えー!?と騒ぐ女子達を除いて俺の腕をとり、人家のない空き教室に行く。
「城崎先生…どうしたんですか…?」
「いや、それこっちのセリフ。お前がどうしたんだよ?」
「俺は…別に大丈夫ですよ…?」
「嘘つけ、さっきあんなに笑顔だったのに急に暗い顔になってるから。…何かあったのか?」
「……」
何で城崎先生は、何でもお見通しなんだろう?今まで自分のことに気づいてくれる人なんていなかったから、つい本音を言ってしまった。
「…家に、帰りたくないです……」
「帰りたくない…?」
「実はさっき、父から電話が来て…取引先の人と食事会が今週結構あるみたいで…もう、嫌なんです。維網家の格を下げるなって…もうウンザリなんです。だから、帰りたく…ない……」
あまりに泣く事がなかったからか、涙が溢れ出して止まらなくなってしまった。
「す、すみません…俺……」
「維網…」
「……?」
「帰りたくないなら…俺の家来るか?」
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