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「はぁ…はぁ…しばらくは来ない…よな…」
学校に着いた。時間は7時前。まだ早かったのか、他の教員の姿が見られなかった。まぁ…学校の鍵も空いていなかったし、当然か。俺は、朝の学校の見回りをしに職員室を出た。特に変わった所はない。そして、まだ誰一人生徒の姿は見えない。生徒玄関近くに行った時、誰かが入ってきた。恐らく生徒うちの生徒。挨拶でもするかと思っていたが、俺はすぐにやめた。なぜなら、その生徒は梓だったからだ。何でこんな早い時間帯に?それに、顔色も悪そうに見える。どうする?自分から引き離しておいて今更声をかけるのは気が引けるし、かといって顔色が悪そうな状態で放っておくのは教師としても、そして一応、梓の保護人としてもまずいと思う。俺はそんなことを思いながら、一応ついて行くことにした。梓は教室に入って自分の席に着いた。そしてうつ伏せになった。
「……眠い…」
急に梓が喋った。誰もいないから独り言だ。そう思っていると、梓の独り言は続いた。
「もう…何で急に冷たくされたんだろ……。何かあったなら言えばいいのに…本当に意味分かんない。城崎先生のバカ…嫌い……きら…い……」
梓は泣き出した。しかも号泣状態…。
「……梓…」
「~~っ!嫌いに…なれるわけないっ!大好き…っ!ずっと一緒に…いたかった……。何で…どうして…?寂しい…一人は寂しいよ……」
梓の本音…。ごめん、梓。俺、自分勝手なことばっかりしてたな。ちゃんとこのことが片付いたら、ちゃんと話したい。絶対に話すから…。すると、梓はまだ独り言を続ける。
「先生の誕生日…ちゃんとお祝いしたかったのに…」
……え?誕生日…?俺の?
「もう、一生口聞かないで生きていくのかな…?やだよ…。ちゃんと話したいよ…。」
「……」
俺の誕生日は、昨日。すっかり忘れていた。まさか梓が、俺の誕生日を覚えていてくれてるとは思っていなかった。
「城崎先生……貴史さん…お誕生日おめでとうございます……あなたが生まれてきてくれてよかったです……。」
「……っ!」
その言葉に…俺の目頭が熱くなってきた。それは頬を伝って床に落ちた。
生まれてきてくれてよかったです
今までそんなこと、言われたことがなかった。俺は梓のいる教室を後にして職員室に戻る。ドアを閉めた途端、涙が溢れて止まらなかった。
「梓…ごめん……」
そんなことを口にしながら、俺は床に座り込んだ。
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