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第8章 もう離さない。
梓side
朝早く、俺は学校に行った。そして、我慢できずに教室で号泣。本当に…何やってるんだろう……。勉強しよう。もうそろそろでセンター試験なんだから。教科書を開いて勉強しようとしたがダメだった。教科書には、貴史さんに教えてもらった形跡が残っていたからだ。それにノートにもビッシリ…。
「…貴史さん…あなたのこと…忘れたいのに…忘れられない……どうしたらいいんですか……」
俺は教科書を抱えたまま机の前で蹲った。
「梓君…梓君っ!」
「……ん…」
「大丈夫?どこか痛い?それとも具合悪いの?」
目を覚ますと、同じクラスメイトの女子が不安げな顔をして俺を見ていた。
「ごめん…大丈夫……」
「そう?ならよかった。」
彼女の前では笑ってみせたが、正直もう笑うのは限界だ。悲しくて寂しくて仕方ない。彼女は俺が大丈夫そうだと思ったのか、友達のところに行った。自分で…何とかしなきゃ……。すると、教室のドアが開いて貴史さんが入ってきた。
「ホームルーム始めるぞ~、お前ら席につけ。」
ちゃんと忘れなきゃ…忘れるためにも顔を合わせてはならない。
「えーと、今日はみんなに伝えないといけないことがあります。」
伝えないといけないこと?
「今日、俺はある人にナイフを持って襲われます。」
……はい?
「え?城崎先生、何言ってんの?正気?」
「冗談でしょ?」
「俺は冗談など言わない。今廊下にそいつがいるからな。」
そう言って貴史さんが指さしたところを見ると、本当にいた。怖い表情で、ナイフを握りしめながらドアにひっついていた。
「ひっ……」
怖い…何で貴史さんが…?
「まぁ、彼女にも言ったけど…この教室の中には入ってこないから、安心してくれ。迷惑かけるが、よろしく。じゃあ…ホームルームは終了だ。号令。」
その後、挨拶をして終わった。貴史さんが教室を出た後、凄い音が聞こえた。大丈夫なのだろうか?
「ってか、さっきの怖い女の人って前のあの心彩さんって人じゃない?」
「え?違くね?だって、あんな美人があんな狂気に満ちた顔しないだろ。」
「あんた、甘いわね。女ってのはあぁ言うのが本当の女の顔なのよ。」
クラスメイト達がそんな噂をしている。あれが、心彩さん?貴史さんと婚約…したのは…あの人だよね…?胸が苦しい。もう、嫌だ。誰か俺を解放してくれ……。
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