第8章 もう離さない。

2/6
前へ
/64ページ
次へ
二時間目、移動教室で廊下に出ると何やら騒がしかった。見ると、心彩さんらしき人と貴史さんがいた。貴史さんが言ってた通り、彼女はナイフを持っていて、貴史さんは襲われていた。 「待ちなさいよ!貴史~!!」 「それで大人しく言うこと聞く奴じゃないから、俺。」 「死ねっ!死ね!!」 ナイフをぶんぶん振り回していて彼女は貴史さんを追っていく。 「何か…凄いことやってんな~…城崎先生も心彩さんも……」 「…そう…だね……」 「ん?どうした?梓。大丈夫か?」 「大丈夫。気にしないで。」 「そっか。じゃあ早く行こうぜ!」 俺はクラスメイトの男子と一緒に、次の授業の教室に行った。 お昼休み、俺は生物の先生に勉強を教えてもらいに職員室に行った。 「維網、悪いな。そこの席で待っていてくれ。」 「はい。」 俺は先生に言われた通りに近くにあった椅子に座る。 「そういえば、維網。昼食は食べたのか?随分来るの早いが。」 「あー…実はお昼抜いたんです。お腹すいてなくて…」 「おい、維網。いくら何でも抜くのは良くない。弁当持ってこい。少しくらい食え。力出ないぞ。」 「あ…すみません。お弁当、持ってきてなくて……」 「はぁ…仕方ないな。これでも食え。」 そう言って、先生はコンビニのおにぎりを俺にくれた。正直お腹はすいてるけど、食欲がなかった。変な感じ。そう思いながらもおにぎりを少し口にする。あ…おかかだ。 「さてと、どこから教えようか。維網は学年で一番いい成績だから、基礎は出来てる。応用問題にでも取り組んでみるか?」 「…そう…ですね。応用のなかでも一番難しい問題ってあります?」 「ん?最難関の問題か?そうだな…。あ、この問題でもやってみるか。」 そう言って先生が取り出したのは、かなりハードな問題だった。なんでもいい。今はただ、違うことから頭を離れさせたかった。俺は問題を一心不乱に解いた。 「うぅ…」 頭がパンクしそうだ。こんな難易度の高い問題、ちゃんと勉強しないと差をつけられて試験落ちちゃう。帰ってからやらないと。 「維網、そろそろ追い込みの時期だからな。焦らずに今までやってきたことを発揮すれば、お前ならきっと大丈夫だ。」 「…ありがとうございます。頑張ります。」 そして、昼休み五分前に俺は職員室を出た。すると近くにいた貴史さんと目が合った。貴史さんは俺の顔をあまり見ずに職員室に入って行った。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加