第2章 父親の英才教育

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「大丈夫か?」 「はい…ご迷惑おかけしてすみません。」 「迷惑じゃないから大丈夫だ。また泣きたい時はそばにいてあげるから。」 「ありがとうございます。」 大分落ち着いて涙も止まったが、目が凄く腫れていた。まぁ、あんなに号泣して腫れない方がおかしいが…目の腫れた姿を見せたくないのでまだ城崎先生に抱きついて顔を隠したままでいる。 「あのさ、維網。」 「…はい?何でしょう?」 「お前の過去のこと、俺は知りたいんだけど…お前が良かったらでいいから話してくれると嬉しいな。」 「……」 「無理強いはしないから安心しろ。言いたくなかったら言わなくていいから。」 「…いえ、俺の過去が知りたいなら話しますよ。」 そう言って、俺は顔を上げて城崎先生を見る。城崎先生はここまでしてくれたんだ。城崎先生が望むなら、俺は自分の過去を全部話そうと思った。 「俺の家は、先生も知っていますよね?」 「あぁ、維網財閥だろ?有名だからな。知らない人とかはいないはずだ。」 「俺はそこに生まれて、5歳から父親の英才教育を受けました。」 「5歳から……」 城崎先生は、暗い表情になる。 「はい。5歳から7歳で小学校卒業程度の学力をつけて、8歳から10歳で中学校卒業程度の学力をつけ、12歳から13歳くらいで…高校卒業程度の学力をつけられました。更に、うちの家は年に1回必ず海外留学をして英語の力をつけています。その為にも英会話教室に行かされたり、家庭教師をつけられたり、あとは取引先との食事会もしょっちゅうあって全然自由とは無縁の生活を送ってきました。その生活が嫌で、家出したこともあります。」 「……」 城崎先生は黙って俺の話を聞いてくれている。 「何度か倒れた事もあって…」 「倒れた…っ!?」 「あ、はい…お医者さんは疲労と寝不足が原因だって何度もおっしゃっていて。」 「寝不足って…何時間寝ていたか覚えてる?」 「えーと……確か、2時間…」 「ちょっ…2時間って!そりゃ倒れるでしょ。」 「まぁ……でも、父が見ていた時もあって眠れない日も何日かありました。ざっと、こんなものですかね?」 「……」 「城崎先生…?」 先生は、俺の腕を取り再び俺を抱きしめる。 「せ…先生……?」 「大変だったんだな…もう、お前を辛い目に合わしたりなんかさせない。絶対に俺がお前を守る。」 「な、なぜそこまで……」 「お前のことが好きだから……」 「……え?」
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