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流れよと 流れよと祈りながら祈りながら、既に生み月に入り、疱瘡を患うた梵天は、東北一の美女と名高き義母(ぎぼ)様の…寵(ちょう)するところとなっていた。 ひとつまなこが壊死し、醜く飛び出したという。 義母様は、己れの育てのしくじりを認めぬ。 梵に母者はそなたを見捨てたと…吹き込んでいるそうな。 そうなら。 それに乗じて私は鬼になろう。 産み月に、前につき出した尖り腹はおのこのしるし。 このややがおのこなら、兄者は当主に据えよと言うてくるに違いないのだから。 演じ切ろう鬼の母。 容姿醜くなったと梵天を疎み続け、この次男坊をかわいがろう。 幸い梵天には片倉の家のきたがついている。 めったな子供には育つまい。 かわいがってかわいがって育てておきながら、この腹の子はほど良いところで私が弑(しい)るのじゃ。 私は伊達を守る。 最上の下には決して置かぬ。 これが私の恋。 業の恋じゃ。
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