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城に誰もいなかった 病み臥っているというから輝宗様が見舞いを 許してくだされた、のにっ ここに居ったか にやりと笑った顔は人でなく 犬畜生のものだった。 輝宗様をお慕いしている。 初めてお会いしたのは婚儀の席で まだ心根は子供であった私を、 ゆるりとと、 待って待って下さった。 ああ、この方が初めての方ならどんなに良かったか。 でも私は九つのときから兄、義光(よしあき)のものだった。 父もそれを知っていた。 私を押し拉(ひし)ぐ兄を見、父は言った。 どうせ他家に嫁がせる。 最上を忘れぬよう、しっかり身に刻みつけてやるがよい。 されどゆめゆめ子は生すでないぞ。 私は泣いた。呪った。 でも周りは噂した。 最上の兄妹(あにいも)は仲が良い。 聞くのも嫌だった。
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