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熱が頬を舐め上げて、思わず固まってしまったお姫様。その直後、ボッと火がついたかのように頬が朱に染まります。
「可愛い」
甘く、優しく、熱の篭った声がお姫様の耳朶を打ちました。その声に、お姫様の胸がきゅん、と締めつけられ、どっと涙が溢れてきます。だけど、どうしてでしょう? 何だかいつもと違う涙のような気がします。それがどうしてなのか分からなくて、お姫様は戸惑いました。
そんなお姫様を見て、少年は囁きます。
「ねぇ、お姫様、僕の前以外では泣かないで。そんな可愛い顔を、僕以外に見せないで」
そうして、少年はお姫様の耳に、軽い口づけを落としました。「ひゃう!」とお姫様の口から変な声が出てしまいます。その声に満足すると、少年はお姫様から離れました。
「約束だよ、お姫様」
少年はクスクスと笑いながら言うと、バルコニーへ行き、そこから飛び降りました。
スッ、とお姫様の心臓が冷えます。慌ててベッドから降り、バルコニーから下を見ました。そこには笑顔で手を振る少年がいて、ほっと胸を撫で下ろします。少年が死んでしまったのでは、と不安だったのです。
安心したためか、力が抜けて、お姫様はへにゃ、とへたり込んでしまいました。そして再び目を下に向けたときには、そこに少年はおりませんでした。どうやら既に去ってしまったようです。
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