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泣き虫姫のお伽噺
むかしむかし、ある国にお姫様がおりました。キラキラと輝く金色の髪に、落ち着いた青の瞳。とても美しいお姫様です。けれどそのお姫様には、ある大きな欠点がありました。
それは、泣き虫だということです。
部屋の外に出るだけでもうっすらと涙を浮かべ、ほんの些細なこと……例えば、人と軽くぶつかってしまうだけでも、大声で泣いてしまうお姫様です。
民は皆そんなお姫様を『泣き虫姫』と呼び、親しみを覚えておりました。
しかしその呼び名に、当のお姫様は王族としての責務を果たせない己を不甲斐なく思い、いっそう泣きわめきます。
「わたし、わたし、強くなるわ。強くなって、ぜった、ぜったいに、泣かないようになる」
そう言うお姫様ですが、その直後、外で羽ばたく鳥の羽音に驚き、涙を浮かべてしまいます。どうやら、そう簡単には克服できないようです。
そして、あの夜がやってまいります。
お姫様はパチ、と目を覚ましました。そこは真っ暗な部屋。怖くて仕方がありません。瞳にうっすらと膜を張りながらメイドを呼ぼうと呼び鈴に手をかけたところで、はた、と思い起こします。
(だけど、わたし、強くならなくちゃ)
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