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議論が煮詰まりかけた時、ふと村人のひとりがいいました。
「子ども……ならどうだろうか」
子どもならば、ゴーレヌさんのように即戦力ではなく、キシュヌさんのようにややこしいしがらみもありません。
この村に、血縁者のいない、孤児のような子がいるのであれば、その口減らしも同時に出来てしまいます。
それは悪魔の囁きのように魅力的な言葉だったでしょう。
もしもそんな都合のいい子どもがいたとしたら、彼らもその子どもを捧げることを選んでいたかも知れません。
幸運にも、この村にそういう境遇の子はいなかったらしく、そしてそれ以外の子どもを捧げることもありませんでした。
キシュヌさんが先ほど見せたのとはまた違う、毅然とした様子でその意見を却下したからです。
「子どもは村の宝です。子どもを捧げるくらいなら、多少の不都合があろうと、わたくしが犠牲となります」
その言葉に賛同する村の人は多く、提案した人は消え入りそうな様子で例えばの話だと案を取り下げていました。
誰だって犠牲になりたくはないものです。
他の候補を探すことになりました。
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