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日向は夜になると息をしなくなった。 僕が不安になって日向の胸に手を当てると、「泣きたくない、泣きたくない」と泣きだした。 日向のしゃっくりのリズムとせわしない鼓動のような音を繰り返すことを、彼女のことと合わせて思い出し、絶望のテーマソングと名付け頭から離れない日も多々あった。 日向は日が暮れるとご飯がおいしいと言った。 そして、「生きているのが素晴らしすぎる」と、歌った。 有名なバンドの有名な曲の、この部分だけを何度も歌った。 僕の無意識な鼻歌を覚えてしまったようだ。 僕は日向の歌を聞くたび、日向はきっと、この歌詞の意味なんて知らないまま死ぬだろうと思っていた。
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