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日向というのは、突然僕の家のソファに寝ていた、ひとの形をした生物だ。
日向が生きているのか死んでいるのかはわからない。どんなふうにここまで来たのかも知らない。
ただ、僕の目に見えて確かなのは、その金色の髪の少女の姿だけ。
勿論、僕は一人暮らしの部屋の中に見知らぬ女の子がいるわけだから、はじめのうちは跳び上がって驚いた。
だけど、日向は青い瞳をキラつかせて「お邪魔します」とだけ申し出た。
僕も驚いて、「ああ、まあ。どうも」なんて言ったと思う。
日向のことは家出した少女か何かだと思っていた。
だから自分のことはあまり喋らないのだと思っていた。
別に何も困らなかった。
この部屋には冷房が無いから、ひと月やふた月したら暑くなって、仕方が無くて元に居た家に帰るだろうと思っていた。
たまに、犯罪者か何かなのかもしれないとも考えた。
こんな無邪気な目をしている女の子が人殺しだとか万引きだとか援助交際だとかするのかな、と思うと、むしろ彼女に興味がそそる。
いいや、実のところ、ちっともそそらないけど、むりやりにでもそういうことにしておきたい。
とにかく僕は自分になにか理由を付けて、日向を突き放すことを難しく思おうとして仕方がなかった。
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