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僕が日向のお気に入りのソファに座ると、日向は嬉しそうに僕の膝の上に頭を乗せた。
日向が窓際にいても、台所にいても、寝室にいても、バルコニーにいても、必ず僕がソファに座ると僕の膝の上に頭を乗せにきた。
「このままこの膝の裏と繋がって、この脳味噌を持ってっちゃってよ」とカラッと渇いた声が聞こえたと思った。
日向が喋ったようだった。
僕は聞こえないふりをして、テレビのスイッチを入れる。
日向は気紛れに僕にしがみつき、突き放し、余裕を持て余し、息苦しいとのた打ち回った。
僕はそのたび、ソファに腰をおろし、何かを償うように、日向の顎を撫でた。
日向の輪郭を確かめるように、サラサラと溶けてしまわないように、僕は念入りに顎を撫でた。
そうすると日向はやわい髪の毛を揺らし、「ネコじゃないんだから」と八重歯を見せた。
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