郊外の喫茶店

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「お待たせしました」  腰かけながら頭頂部を軽く掻いている。茶化そうかと思ったが、お見通しだったのか田居がこちらを見ながら口を尖らせているいるので止めることにした。 「ご注文はどうされますか?」 「訊くんですか?」  宇藤さんは不思議そうな顔をする辻を見て満足げにしている。 「愚問でしたね。では《いつもの》で」  微笑みながらカウンターへと消えていった。時々お茶目な悪戯めいたことをする癖が抜けないのは性格だからなのだろうか。優しい目の奥に潜んでいる鋭いものを覆い隠しているかのようだ。 「それにしても医者がコーラ好きなんて、医者の不養生よね」 「医者だって人間です。好きなものが健康にいいとは限りませんよ」 「糖尿かなんかで死にそうだな。医者なのに」  俺はコーヒーカップを弄びながら悪戯っぽく軽口を叩く。 「鷺巣くんまで酷い」  辻の少々困った顔を眺めるのが楽しいと言ったら悪趣味なのだろうか。本気で困らせる意図はないし辻贔屓の田居もケラケラと笑っているので、許される範囲なのだろう。
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