宇藤さんと置手紙

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 体調が芳しくなかった俺は辻医院にいた。 「軽い風邪ですね。薬を出しておきます」  診察を終えた辻が医者らしい笑顔を俺に向けたその時、診察室のドアが勢いよく開いた。走ってきたからだろうか、息が上がっている田居が俺たちを確認する。 「鷺巣くんも居たんだ、探したのよ」 「どうしたんだよ、慌てて」  椅子をくるっと回転させる。こういうタイプは医院以外に見たことがない。 「宇藤さんが居なくなってるの!」 「え!?」  田居の言葉に二人して驚く。  しかし、先日の鵜飼と同じことが起きたとは限らない。 「お店がCLOSEの札を下げていてね」  買い出しに行っている可能性も考えたが、営業時間内だから考えづらい。今まで臨時休業にしていたこともあったが、事前に話があるか貼り紙がしてあったはずだ。  三人でいろいろと考えてみたが、現地を行ってみることで意見が一致した。ここで想像を働かせていても仕方がない。辻は待合室を覗いて他に待っている患者が居ないことを確認した上で、臨時休業の紙をドアに貼り付けた。
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