0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
解散まで、残り30日――
「私、脱退します」
事務所内にある小さな会議室に押し込まれ、売出し中のアイドルグループ『ドロップ☆チャーム』のメンバー達は、そう告げられた。
豆鉄砲をくらった鳩のような顔になるメグミ。リアクションが追い付かず、間抜けな顔のハナ。怒りを押し殺しているような、涙をこらえているような、どちらともとれる表情をするレイ。何か考えているようで何も考えてないかもしれない顔のサツキ。そして、脱退の意を表明しているハルコ。
という、個性豊かな5人のメンバーで結成されたこのグループは「あなたの心を潤すアイドル」をコンセプトに、紆余曲折、波瀾万丈、どうにか結成2周年の記念ライブをとても小さなステージではあるが、ワンマンで開催できるまでになってきたところだった。
「なっ……なんでぇ?」
長めの沈黙の後、リーダーのメグミが鼻をすすりながらハルコに問う。この率直さが、歌もダンスもいまいちなメグミが、リーダーたる所以だ。
「ずっと、思ってたの。でも誤魔化してた。今日、それがはっきりした。私が居る限り、このグループ
は売れない」
「意味……わかんないしっ……」
悔しそうに呟くのは、クールビューティー担当のレイだ。彼女にとってハルコは、良きライバルであった。メンバー内で№1の歌唱力とダンスの技を持つハルコの背中を追いかけ、憧れと嫉妬の間で苦悩するレイを何度も見てきた。
「マネージャーさん、なるべく早い方がいいと思う。いつがいい?」
ハルコが抜ける事は、グループにとってかなりの痛手だ。トークやイベントの回しは、頭の回転の速い彼女にまかせきりだったし、歌やダンスに関しても、受け持つパートが集中している。そんな事はハルコ自身も解かっているはずだ。それでも彼女は、自分の存在をグループが売れない理由として挙げている。彼女にしか分からない、特別な理由があるのだろう。
「1か月後の、2周年記念ライブだな」
最初のコメントを投稿しよう!