あまどる

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解散まで、残り30日―― 「私、脱退します」  事務所内にある小さな会議室に押し込まれ、売出し中のアイドルグループ『ドロップ☆チャーム』のメンバー達は、そう告げられた。  豆鉄砲をくらった鳩のような顔になるメグミ。リアクションが追い付かず、間抜けな顔のハナ。怒りを押し殺しているような、涙をこらえているような、どちらともとれる表情をするレイ。何か考えているようで何も考えてないかもしれない顔のサツキ。そして、脱退の意を表明しているハルコ。  という、個性豊かな5人のメンバーで結成されたこのグループは「あなたの心を潤すアイドル」をコンセプトに、紆余曲折、波瀾万丈、どうにか結成2周年の記念ライブをとても小さなステージではあるが、ワンマンで開催できるまでになってきたところだった。 「なっ……なんでぇ?」  長めの沈黙の後、リーダーのメグミが鼻をすすりながらハルコに問う。この率直さが、歌もダンスもいまいちなメグミが、リーダーたる所以だ。 「ずっと、思ってたの。でも誤魔化してた。今日、それがはっきりした。私が居る限り、このグループ は売れない」 「意味……わかんないしっ……」  悔しそうに呟くのは、クールビューティー担当のレイだ。彼女にとってハルコは、良きライバルであった。メンバー内で№1の歌唱力とダンスの技を持つハルコの背中を追いかけ、憧れと嫉妬の間で苦悩するレイを何度も見てきた。 「マネージャーさん、なるべく早い方がいいと思う。いつがいい?」  ハルコが抜ける事は、グループにとってかなりの痛手だ。トークやイベントの回しは、頭の回転の速い彼女にまかせきりだったし、歌やダンスに関しても、受け持つパートが集中している。そんな事はハルコ自身も解かっているはずだ。それでも彼女は、自分の存在をグループが売れない理由として挙げている。彼女にしか分からない、特別な理由があるのだろう。 「1か月後の、2周年記念ライブだな」
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