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「やだぁ!マネさん、ハルコ止めてよ!!」
ついに、大粒の涙をボロボロこぼし始めたメグミに、腕をポカポカ叩かれる。
「ハルちゃんお願い、辞めないでー?」
ようやく状況がのみ込めたハナが、ハルコの手を握る。すべてを包み込む優しを持つ彼女に、メンバー達は何度助けられただろう。
「みんな、ハルコの意志、尊重しようよ」
レイは目を赤くしながら、必死に前を向こうとしている。彼女の無理やりなポジティブさが、グルー
プをけん引してきた。
「……」
サツキ……何か言ってくれ。
「とりあえず、今日はもう遅いから。また明日、話し合おう」
明日の夕方には野外イベントの前座で、15分間のステージがある。本当にハルコを2周年記念ライブで卒業させるとしたら、あと5回しか無い。一つも無駄にできない状況だ。
「これからドロチャをどうしたいか、各自でよく考えるように。問い詰めたり他のメンバーと一緒に考えたりは無しだ。一人きりで、向き合ってくれ。以上、お疲れ様」
まず、ハルコを部屋から出し、その後他のメンバーを時間差で帰らせる。サツキが何か言いたそうだったので、というより彼女から一言聞きたかったので、意図して最後まで残らせた。そしてサツキは、自分のペースでポツリポツリと話し始めた。
「マネージャー。私、辞めるの、解かるかも」
「ハルコが辞めたい気持ちか?」
よかった「ハルコがグループを辞めてしまう」事は伝わっていたようだ。
「ううん。ハルコちゃんが辞める理由」
黒目がちな目が真っ直ぐにこちらに向けられる。ハルコが辞める理由、それは、俺が今一番知りたい事だ。
「ハルコから聞いたのか?」
「ううん。でもほぼ確実……今は教えないよ?」
顔に「教えろください」と書いていたのかもしれない。サツキが訝しげに俺を見る。
「サツキ、ヒントを……」
「観察、してください。じゃ、また明日です」
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