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「冬弥さーん!飯出来たんで出て来てもらって良いですかー?」
今日、白井さんは帰らないから、舎弟らしき内の一人が俺の世話をしに来ている。馬鹿でかい声でドンドン扉を叩かれ、堪らず頭まで布団を被った。あの男は何時も白井さんの前では不貞腐れている奴。歳は二十後半位だろうか。名前は確か白井さんが慎太郎とか呼んでいた気がする。
「いらない」
俺の声は扉を叩く音で掻き消された気もしたが、どうでも良かった。相変わらず食欲はない。お陰でまた少し痩せて、それも白井さんの苛立ちの原因になっていた。
「はあ?またですか?困るんですよねえ。俺が将生さんに怒られるんですから」
扉の向こうの声は大分苛立っているようだ。
「知らない」
こんな大分年下のガキに敬語を使わなきゃならないあの男は可哀想だとは思う。でも俺には関係ない。断固俺が部屋から出ないと分かると、慎太郎さんは盛大な溜息を吐いた。
「良いっすねえ。わがまま言っても怒られないんだから。あの人すげえ陰険なの知ってます?こないだもちょっとしたヘマなのに人間否定ですよ。それから延々と陰湿な口撃を受け続けてさすがの俺も二日引き摺りましたわ。なんて言うんですかね、心的ストレス?医者行こうかなあ。治療代は冬弥さんに請求しますけど良いですよね?だって、冬弥さんの所為だし」
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