第八回

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第八回

 浅間山の猿狩りも日が近くなってきた。駿河城下は騒然としている。  実りの秋を迎えて、農民達の不安も大きくなってきていた。相変わらず白猿の出没は止まず、作物を食い荒らしていく。  農民達の怒りもついに爆発した。青竹を切って竹槍を作り白猿を襲い、浅間山へと追い返す。時には神獣だという事も忘れて殺してしまう。それでも白猿の数は一向に減らない。  また駿河に流れてくる浪人の数はどんどん増えている。猿狩りに参加する為に、各地から食えない浪人が集まってきているのだ。猿狩りに参加すれば、僅かだが報酬にもありつける。その報酬目当てに浪人が集まり、城下は人に溢れていた。 「城下町は、すごい人ごみですよ 」  城下の様子を見てきた佐助は帰ってくるなり霞に言った。忠長の愛妾・霞は蒼白な顔で佐助の話を聞いている。 「まるで戦が始まるみたいだ…… 大阪の時のようでした」  佐助は心ここにあらずな表情である。過去を思い出しているのであった。豊臣と幸村が滅んだ大阪の陣を。 「もう、忠長様を止める事はできぬのか?」  霞は今にも泣き出しそうな顔で佐助に聞いた。霞の顔に涙が流れた。     
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