第八回

6/12
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
 部下の報告を聞き、友矩としては驚きを隠せない。仙次郎は裏柳生の誇る柳影七傑の一人である。  並の人間には持ち上げる事すら難しい豪刀を振り回し、その剣の腕は友矩とて容易く打てる相手ではない。  その仙次郎に六人の部下をつけて、十兵衞や霞達に夜襲をしかけさせたのは友矩である。その手練れ七人が、苦もなく討ち果たされるとは! 「敵もやるものですな」  助九郎はのんきに呟いた。助九郎は宗矩に絶対的忠誠を誓っているが、十兵衞を敵とは見なしていない。この名剣士は今の状況を、心のどこかで楽しんでいる素振りすら感じられる。 「野犬に食われかけていた仙次郎らの遺体は回収いたしましたが……」  友矩と助九郎を前にして、報告の裏柳生の者は青ざめた表情をしている。 「よい。仙次郎達は丁重に弔ってやれ。せめて安らかに眠らせよ。野犬になど掘り返されぬように」  友矩の言に裏柳生の者は部屋を出ていく。友矩は美貌の顔に理解できかねる感情を浮かべて助九郎に振り返る。 「奴ら、それほど強いのか?」  友矩には想像できかねるらしかった。その魔天の剣は宗矩すら凌ぐと評されても、十七歳なのだ。十兵衞と違って、修羅の日々を過ごした事のない友矩には、かつての大阪で武名を挙げた霧隠才蔵や猿飛佐助という存在がいまいち理解できかねた。     
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!