第八回

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 その霧の中で裏柳生を相手に、才蔵と佐助が死闘を展開していた。 「お覚悟!」  雄叫びを上げたのは裏柳生の柳影七傑、土屋半兵衛であった。前後の人の区別もつかぬ霧の中を、大刀を抜いて忠長に迫ろうとする。 「……こっちじゃ」  半兵衛は背後に声を聞いて振り返った。その右目に短槍の穂先が突き刺さった。鋭い穂先は半兵衛の脳まで貫いて、後頭部に突き抜けていた。  佐助は裏柳生の奇襲をいち早く察した。  即座に陣幕の裏に忠長と霞を押しこみ、楓に二人の護衛を任せた。  そして裏柳生に果敢に攻め込んでいく。同時に才蔵老人の霧隠の術によって、陣内に霧が満ちていった。  裏柳生達は突如発生した霧に動揺した。前後も判別できかねる霧の中で、うかつに刀を振り回せば味方を斬る事になってしまう。  佐助はその隙を突いて、裏柳生の一団に飛び込んだ。周囲には敵しかいない。  佐助は跳躍した。跳躍しつつ一人の裏柳生に蹴りを放つ。黒頭巾の内から血を吐きながら裏柳生は吹っ飛んだ。  佐助は手にした苦無で、一人の裏柳生の目を裂く。悲鳴を上げてのけ反った裏柳生を蹴り飛ばして、佐助は左右に握った苦無で次々と裏柳生を斬り捨てていく。     
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