第九回

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 だが、すでに彼らは紀州において一大勢力を築きつつあったのだ。助九郎一人の剣では太刀打ちできる存在ではなかった。 「ふふ、冥土の土産に聞くがよい」  全身を甲冑に包んだ男が一人、一団の中から抜け出した。その男の発する殺気に助九郎は身を固くする。 「我が名は風魔。四代目・風魔小太郎」 「風魔だと!?」  助九郎の知る風魔忍者は、半世紀 近くも前に江戸において全滅したのではなかったか。 「その先を知る必要はない……」  小太郎と名乗った男が腰の大刀を引き抜いた。四尺あまりもある大刀である。その刀身が、月光に反射してギラギラと輝いた。  助九郎は死を覚悟した。そして折れた刀を手にして小太郎へと踏み込もうとした瞬間、悲鳴が聞こえた。 「ぎゃ!」 「うあ!」  小太郎の背後で叫び声が続いて起こる。小太郎の配下の者達が、次々と血煙を上げて地に倒れていくのだ。 「おお!」  助九郎は歓喜の声を上げた。 「何奴!?」  小太郎は標的を変えて、配下の一団へと目を向けた。  一団の中心では黒い旋風が起きていた。  両手に二刀を提げた一人の忍者が、瞬く間に数人を斬り捨てていたのだ。  忍びの者は小太郎へと向き直った。  その顔には黒い鬼の面がある。 「何者だ?」  小太郎は再度、問う。鬼の面をつけた忍びの並々ならぬ剣の腕に感服したからだ。どこか楽しげである。     
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