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第四回
十兵衞が目を覚ましたのは三日後だった。
目覚めると、十兵衞は屋敷の一室に寝かされていたのだ。まだ体がよく動かない。右目には包帯が巻かれ、切り裂かれた傷がひどく痛む。
寝床の中で唸り声を発していると、霞達が集まってきた。
「十兵衞……!」
霞が涙ぐむ。袴姿ではなく着物姿だ。そうしていると高貴な身分の姫に見える。やはり真田幸村の血を引く、身分卑しからぬ娘なの だ。
「生き延びたな、十兵衞……」
佐助は苦笑していた。佐助は十兵衞とどう接していいのかわからないようだ。
三日前、夜襲をしかけてきたのは十兵衞の父の配下である裏柳生なのだから。
「十兵衞殿、話を聞かせていただきたい」
才蔵老人は厳しい眼差しで十兵衞を見ていた。すでに温厚な老爺の面影はない。
そう、かつて真田幸村配下の忍びとして勇名を馳せた霧隠才蔵の顔がそこにあった。
「爺!」
霞の声にも才蔵は動じぬ。黙って十兵衞を見据えている。
大納言忠長は朝の調練中であった。
槍の調練だという。忠長の元に訪れた筆頭家老・朝倉宣正は目をむいた。忠長は庭に出て上半身裸で槍をしごいていたからだ。
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