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教科書は何も教えてはくれない。
わからない問題があると先生に聞くのが生徒の仕事のようなものだろう。ただ、先生に聞くとだいたいの教師は必ず決まった捨て台詞を言ってその場を去る。「こんなの教科書読めばわかるだろう。」と。
確かに後から教科書を読めばある程度問題は分かるのだ。ただ、その時はほんとにわからなくなる。あの現象は一体何なのだろう。そして今、私は数学の問題がものすごく解らないので困っている。
因数分解と言うものはなぜ存在するのだろうか。教科書読んでもわからない。でも解らないまま何事もスルーするのは嫌いな質である。だから私は手をあげる。「この問題わからないです。」私の視界には
机の上に乗ってある教科書、ノート、消しゴム、そしてペンを持ってる私の右手だけ。そして手をあげて解説を求めたので解説をしてくれるペンを持った解説者の右手が視界に増えた。「ここはね、こうしてかっこのなかを…」優しく、ゆっくりと問題をペンでなぞりながら解説をしてくれる。うちのクラスの数学担当の教師は25歳と言う若さで同級生からも人気の教師だ。視界に写る手がなんだかたくましく、あまり恋愛には興味ないけど男性と手を繋ぐならこのぐらいのたくましさがいいなと少し思う。思春期だからだろうか。
解説がクライマックスになってきて私もようやく答えにたどり着いた。「じゃあ答えはこうなんだ。」
「そう。よくできました。でもそんなの教科書読めばわかるだろう。」
でた。教師の決まり文句。でも解説してくれたのはありがたい。この決まり文句は好きじゃないけど
ちゃんと目を見てお礼を言わないと。
そう思って私は顔をあげた
「ありがとうございます。せんせ…」
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