教科書は何も教えてはくれない。

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何となくだが人がいる気配がして、少し怖い位だ。 するとしゃーーっとカーテンが開き、ベッドの上から見たことある男子が転がっていた。 「あ。」「あ。」「あーーーーーーーっ !!!!!!」そう、そこにいたのは同じクラスで今日の数学の授業の時間に私に教えてくれた彼だ。悪く言うと私のパンツの色を正確に当てたアイツだった。 「ちょっとなんなんですか。なんであんたがこんなところにいるんですか!数学の時もそうですが私のストーカーですか!?」 「はぁ?なにいってんのあんた!ストーカーするわけないでしょうが。通ってんだよ。ここのボーカル教室に!!」 「え?」と私は少し冷静になってきた。 そして彼が続けて私に言った。 「俺は歌手になるのが夢なのだ。だから通ってる。君のストーカーなんてやってないから。」 「じゃあなんで保健室に。」と質問した。 「……」彼は黙って何も言わなくなった。 「ほら!やっぱり私のストーカーじゃないですか。今日の数学も貴方に聞いてないのにあなたが近寄って教えてきて、そして今は私の習い事の教室まできて私に近づいてる。ストーカーじゃないですか!」 「ストーカーじゃないって!!」と彼はストーカーを、認めない。 「じゃあなんで保健室にいるのか教えてくれませんか?私をつけてきたんじゃないんですか。」 「……」また、彼は黙りこんで深くため息をはいて 「力強く歌っていたんだ。サビがとてもカッコよくて気合いを入れていたんだ。」 彼は今日のボーカル教室でのレッスンの状況を語り始めた。そして 「最後の一番盛り上がるサビの部分で…漏らしたんだ…」 それを聞いて私は「あ、息継ぎ出来なくてむせたのね?」「違う…違うんだ。」 「じゃあなんですか…何を漏らしたんですか。」 「うんこだ。」 「…」 彼は力みすぎて普段開けない、トイレでしか開けないパンドラの箱を開けてしまったらしい。 唖然としてしまった。こういう時私はどう声を掛けていいのか分からないし、どういう顔をしていいのか分からなかった。この時、「この問題は教科書読めばわかるだろう。」とよく教師が言う捨て台詞を思い出したが、この問題は教科書読んでもわからない。 教科書は何も教えてくれない。
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