乾いた風にかき消されて聞こえない。

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乾いた風にかき消されて聞こえない。

花粉が風に揺られて世界中に飛び回る季節。 春とは、綺麗な季節と思いきや、植物の思春期だと私は思う。花粉と戦うのか、それとも目の前の走り高跳びのバーを潜り抜けるのか。選択肢は私には無い。何故なら授業なので強制的にやらなきゃいけないのだから。 「よーい、スタート!!!」 「ガシャシャッ」 私は運動音痴なのかもしれない。 「アーッハッハッハ!!結菜ほんと陸上競技苦手だよね。飛びかたがどんくさいと言うか」 一実は小学生の頃からこの時期の体育になるといつも私をバカにする。でも仕方ない。陸上競技はほんとにできないのだ。マジで。 「そういえばさ…」と一実が話を切り替え私に聞いてきた。 「昨日の昼休みなんで教室飛び出していったの?」 「あ、あれ?あれはね…」 と私は数日前第2グランドで例の彼が歌っていた事と廊下でのほんの少しの会話を伝えた。
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