第十八章 追憶の男達

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 十二時を回った頃漸く玄関の扉が開かれ、隆司さんは疲れた身体を引きずる様に帰って来た。 「ただいま……雪?どうした?」  玄関の前で蹲る俺を見下ろす驚きに満ちた顔を見上げたら、訳のわからな怒りが込み上げる。 「こんな長い時間、一人にしないでよ」 「そんな事を言われてもなあ、将生さんの指示は絶対なんだよ。分かるだろ?ほら、早く寝な。俺も早く風呂入りてえんだよ」  呆れたように溜息を吐いて通り過ぎて行く後姿が、不安を煽る。 「隆司さんっ!」  慌てて抱き着くと、広い背中に隙間無く張り巡らされた筋肉がビクリと強張った。 「……何だよ」 「何で、そいつにも優しくするの?」  ただの八つ当たり。そんな事分かっている。俺にこんな事を言う資格がない事も知っている。それでも嫌だ。隆司さんが他の誰かにもこんな風に優しくする事が耐えられない。俺の知らない所で、俺の知らない顔で、俺の知らない奴の頭を大きな手で撫でてるのかと思うと気が狂いそうだ。  俺の身体をゆっくり離して少し膝を屈め覗き込まれる。そんな優しい瞳で、そいつを見詰めるのだろうか。 「おいで。ゆっくり話そう」 「嫌だ」 「雪、ガキじゃねえんだからよ。頼むよ」     
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