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「……何?聞いて欲しいなら聞くよ?」
悶々とそんな二人を眺めていた俺の視線に気付いた榎木さんが面倒臭そうに伺って来た。
「……良い」
つい突っぱねると二人は再び夏休みの計画に思考を移す。
「じゃあ祭りは?」
「やだ。人混み嫌い」
「やっぱり聞いて!」
思わず縋る俺を冷めた視線が見下ろす。
「何なの鬱陶しいんだけど」
再びしょぼくれた俺の頭を、結城さんが優しく叩いてくれた。
「どうした?」
その優しい言葉に俺は小さな脳味噌で話しを組み立てて行く。白井さんが女、白井さんが女と念じながら。
「この前さ、えーっと、ちょっと話したじゃん」
そこでチラリと二人を伺うと、揃ってぽかんと口を開けていた。
「何だっけ」
完全に忘れてやがる。少し前、俺はこの二人に軽く相談をした事があった。だけど授業中のほんと何気無い会話だったから、仕方ない。
気を取り直し、俺は再び話しを再開した。
「未練が、どうとか……」
もごもごと上手く喋れない事に苛立ったのか、普段表情を崩さない榎木さんの眉間に綺麗な皺が寄る。
「はっきりしなよ半沢」
「こら三バカトリオ。ちゃんと聞いてたかー?」
そこで数学の担当であり、担任である通称ガッキーの妨害が入り、話しは一時中断となった。
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