温かい

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
日曜日の夕飯時を過ぎた時間に行くと、大抵その席は空いていた。国道沿いのファミレスは、日曜日の遅い時間になると急に空く。 貴裕は誰もいないドリンクバーに行って、カフェラテを入れて席に戻る。 と、ちょこんと少女が座っている。 広げてあった参考書をどけて少女の向かい側の席に座り、少女をじっと見つめる。 「私、いちごミルクが良いなぁ」 「またかよ、自分で取りに行けよ」 「いやだー、重いもん」 「全くどこのお嬢さんだよ」 チッと舌打ちしながら、立ち上がってまたドリンクバーへと向かう貴裕を少女はニヤニヤと見つめる。 「なんだかんだで優しいんだよね、貴裕くんはさ」 まばらになった車を窓から眺めながら、少女は貴裕の帰りを待つ。 「ほらよ」 差し出されたいちごミルクにはスプーンが刺さっている。 「もー、またスプーン突っ込んでくるんだからー」 「どうせ、かき混ぜんだろ?」 「そうじゃないんだよねー、貴裕それじゃモテないよ?こうさ、繊細な気配りがないとさ」 「うっせーよ」 貴裕は少女の抗議を無視して、スプーンをぐるぐると回す。白かったいちごミルクはあっという間に薄ピンクへと色を変える。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!