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第1章 少女の話
花が咲き乱れる城内の庭を駆け回る。走った後には花びらが舞い、白銀色の髪を飾っていく。
「シャルさま。淑女は走り回っていけません!」
ふと振り返ると、そこには侍女と騎士が困り顔で立っていた。
大陸全土を治めるカーネリーという大国の第1王女のシャロット・カーネリー。幼さを残しながらも、薔薇色のぷっくりとした唇、吸い込まれそうな青い瞳、光で異なる色に輝く白銀の髪を持つ少女。
「いいじゃない。今は3人しかここにいないもの」
シャルは頬を膨らませ、サファイアのような瞳で訴える。
「もう10歳となられるのですから、少しは落ち着きを持ちませんと」
シャルの専属侍女かつ教育係をするマリーは駆け寄ってきて、小言をいう。
「まぁまぁ、いいじゃないか。元気なのはいいことだよ」
それを後ろからついてきた騎士のオレオットはほほえましそうに見ている。
幼いころから周りの世話をしてくれる二人はシャルにとって姉兄のような存在だ。
「わかったよ!」
「本当にわかっておられるのだか…」
「教育に熱が入るはね、マリー」
「お義母様!」
庭に出てきた正妃セイラの胸にシャルは思いっきり飛び込む。
「あら」
セイラは笑顔で抱きしめてくれる。
現カーネリー王は妃をセイラとシャルの母の二人を迎えていた。
子どもは側室の子シャル一人だけ。シャルにも義兄と弟が2人いたそうだが、義兄はシャルが生まれる前に亡くなり、弟はシャルが2歳の時に病で亡くなった。そして、あとを追うように母も亡くなった。母の記憶はあまり思い出せないし、どうして亡くなったかはマリーもオレオットも教えてくれない。今は2人とセイラが優しく、いつも笑って自分を愛してくれる。それだけで幸せで、母のことは聞かなくなっていた。
「そういえば、お父様は?最近、会ってない」
「あの方は…忙しいのよ。お仕事が大変みたいよ」
「そうなんだ。じゃあ、お義母様、今日は一緒に寝よう」
「甘えん坊ね」
「シャル様、あまり王妃さまを困らせないで」
「では、明日寝ましょう。今日は公務で少し遅くなってしまうから」
「うん。約束ね!」
「えぇ。好きよ、愛しいシャル」
満面の笑みでお互いに笑いかけた。
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