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その夜、寝室で眠りに入ったシャルは大きな音に飛び起きた。窓を見ると、城が炎に包まれていた。部屋の外は、叫び声と兵士や剣を交えている騒音があちらこちらに聞こえてくる。
何がなんだかわからない中で、とっさに外に逃げなきゃと思い、ショールを羽織って、部屋を飛び出す。
しかし、炎があちらこちらにあり、足がすくんで動けなくなってしまった。
「誰か…マリー!オレオット!どこ!」
炎が燃える中、大声で叫んでもこの喧騒の中では1つの声に過ぎない。
「怖いよ…誰か、助けて!」
「シャル!そこにいるの?」
「お義母様!」
泣き叫んでいると、セイラがゆっくりこちらに歩いてきた。安心して駆け寄ろうとしたが、セイラの様子がいつもと違うように感じて手を広げたまま動きを止めた。
「…どうしたの、シャル?こちらへいらっしゃい」
こんな炎の海だというのに、妖艶な微笑みでこちらに近づいてくる。手には短刀が握られていた。
「お義母様?」
「なあに?シャル?」
様子がおかしいと感じながらシャルは後ずさると、セイラは立ち止まる。
「…私ね、シャルに嘘をついていたの。私は…あなたのことが大嫌いなのよ!!」
笑顔が一瞬で醜い憎悪にあふれた顔に変わった。
「憎い、憎い、憎い。あの女の娘というだけで憎いというのに、なぜ瓜二つの容姿をしているの!あの方の愛をすべて独り占めにして!私の息子にまで手をかけて!」
「兄様を?」
「そうよ!あなたの母親は恐ろしい女だったわよ。異国であの方を誑かし、王妃となって、自分の息子を王にするために、私の息子を事故に見せかけて殺したのよ。でも…フフフ、アハハ」
ものすごい形相で叫んだと思ったら、今度は高らかに笑い出した。
「だから、私も殺してやったの。アイツとその息子を」
「…うそ…お義母様がお母様と弟を…」
「そうよ。あなたも一緒に毒で殺してあげようと思ったんだけどね。奇跡的に助かってしまったのよね。…でも、ここで死んで二人のもとへ行きなさい」
「いや…やめて!お義母さま」
必死に逃げようとしたが、髪を掴まれ床に転がされ、足で踏みつけられる。
「うっ」
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