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痛くて、悲しく涙が止まらない。その顔を見て、セイラはニヤリと笑う。
「フフフ、そうよ。その顔が見たかったのよ!みんなに守られ、愛されて、何も知らないまま幸せそうに過ごしているあなたが、ものすごく殺したいほど憎くて、憎くて仕方なかった!何も知らない人形のお姫様。どうせ、なんで城がこんなことになっているのかも知らないでしょ?この国はもう終わるのよ」
セイラはシャルの髪を強く引っ張り、ナイフを当てた。
「国が終わる前に、母親の分までいたぶって殺してあげる。まずはあの女と同じこの髪を切ってあげる」
「いやぁ!!」
ナイフで長い髪を切り取って、シャルの顔に向けて放る。白銀の髪が舞い落ちるのがシャルの瞳に焼き付いた。
「次は腕」
「いやぁ―――――――!」
勢いよくセイラはシャルの左腕にナイフを突き刺す。苦痛で頭がどうかなりそうになる。自分が叫んでいるのかもわからない。
「どう?痛い?あなた、人生で痛いって感じたことないんじゃない?いい経験になったじゃない。死ぬ前に味わえて…次は…うっ!」
ナイフが床に落ちて、シャルの上にセイラは倒れた。
「な、に…」
「シャルさま、大丈夫ですか!」
セイラの体の下から這い出ると、抱き起される。
見上げると、剣を持ったオレオットがいた。
「オ、オレ、オット」
震えてうまく声が出ず、泣きながらオレオットにしがみつく。
「ご無事でよかったです。…ここは危険です。急ぎましょう!」
微笑むオレオットはシャルを抱き上げて、炎の中へ走り出す。
先ほどのセイラを思い出して、心が恐怖で埋め尽くされる。オレオット首に強く捕まって自分を保とうとした。
いつの間にか外に出たようで、王族の私有地である森の中まで来ていた。喧噪も遠のき、ナイトドレス1枚だけだと肌寒い。
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