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「マ、リー」
恐る恐るその体を仰向けにすれば、それは確かにマリーだった。目を見開いたまま、息絶えていた。
「いやぁ!どうして!マリー、マ、リー」
マリーにしがみつき、泣きじゃくる。
もう駄目なんだ。義母には裏切られ、兄のような騎士には犯され、姉のような侍女は殺されていた。私の小さな世界は壊れ、私しかいない。ここで私が死んでも気づくものなどいないだろう。こんなガラスのような世界で幸せだと何も知らずに生きてきたのだ。今の状況がわからないほど、私は無知で傲慢な人間だった。生きる価値もない。
涙も枯れ、ただ空虚な瞳で何もないところを見つめていたら、繁みの中から男が2人出てきた。
「戦のどさくさにまみれて、掘り出し物ないかと思ってきたらこりゃまたすごいな」
城の炎を見ながら金髪の男がいう。
「そうだね。いい人材いないかな。…ルイ、あの子」
マリーの傍から座って動かないシャルを見つけて、もう1人の黒髪の男が目の前で手を左右に振る。
「こっちのお姉さんは死んでいるね。生きているー?」
「心臓は止まってないみたいだぞ、レイ」
ルイと呼ばれた男が手首を触って動機を確認する。
「心がやられちまっているみたいだな。容姿も体もいい娘だな」
上から下まで観察するように見つめる。
「そうだね」
レイは自分の着ていたローブをシャルに着せた。
「まだ、幼いみたいだし、育てればそれなりに使えそうな人材なるかも」
「よし!じゃあ、こいつ持ち帰るか」
うなずき合うと、なるがままにシャルはルイに担がれる。
すると、どこからかシャルを呼ぶ声が聞こえる。その声にビクッと体を揺らし、瞳にかすかに恐怖がかいわ見えた。
「ん?なんだろう」
少しすると逃げてきたほうから、オレオットが現れた。
「シャルさま!…お前たち何者だ!」
「あれ、もしかして、この子のお迎え?」
「そうじゃないみたいだぜ」
無意識でやっているのか、シャルはルイの服を強く握っている。
「なるほど、追われているってことか。こんなふうにこの子をしたのはアイツかな」
「だろうな。面倒くさい。アイツの相手は任せる」
「しょうがないなぁ」
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