第2章 少年の話

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夫人が鞭を振り上げた瞬間、窓が勢いよく割れた。 「な、何事!?」 少年は割れた窓のほうを必死に見た。すると、そこには、月明かりで頭と首を布で隠した子供がたたずんでいた。夜空のように深く青い瞳は夫人を見つめ、短剣を握りしめゆっくりとこちらに近づいてくる。 「誰か!誰かいないの!?また子どもが脱走しているわ」 夫人はまた捕まえた子どもの脱走かと思ったのか、大きな声で人を呼ぶ。 「誰も来ない。この城の者はほぼ気絶させたか、殺した」 「何を言って…」 「おまえとおまえの夫は国際法で禁止されている人攫いを行い、自分たちの欲を満たし人身売買を行っていた」 目を丸くして夫人は近づいてくる子供を見つめる。少年と同じくらいの子供は無表情でただ決められたセリフを言っているように抑揚もなく話す。 「この国の王は秘密裏に処理をしてほしいとのこと…私は任務を遂行する」 「え…いや、来ないで」 夫人の顔が恐怖にゆがみ、扉のほうに逃げようとする。その姿を平然と見ながら、子供は持っていた短剣を夫人に投げた。 「あぁーーーーー!」 右足の太ももに命中し、夫人は扉の前に倒れる。 「派手に殺すように命令されている」 子供は辺りを見回して、投げ捨てられていた鞭を見つけた。 「これを使う」 「い、いや。やめ…あーーー!」 子供は太ももから短剣を抜き取り、容赦なく鞭を何度も振り下ろす。 夫人はわめきながら、身動きがとれないのかなすがままだった。しばらくして夫人は声も出なくなったのかわめくことがなくなった。 「…これぐらいかな」 子供は鞭を投げ出したと思ったら、片手に持った短剣を夫人の胸に突き刺す。 夫人の体はピクリと動き、体から力が抜けた。 何も変わらぬ表情で短剣を抜き、衣服で血をふき取りながら子供は少年のほうに足を向ける。 「ひっ!」 今度は自分が殺されると少年は思い、手足を動かそうとした。しかし、枷で身動きがとれない。
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