銃口を向ける先

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「俺は管理局を抜ける」 「鐵士殿?」 鉄鐵士(くろがね てつじ)は言った。 「もう俺たち家族はこの世界には居られない。ここに居るということは、誰かの血を流すということだ」 おそらく家族と、追手の両者の血が。 「騎士殿。もし、君さえよければ俺たちとーーー」 鉄鐵士はそこで言葉を止めた。 これは、あまりにフェアではないと感じたからだ。 騎士殿と呼ばれた女、シシリアには言葉の半ばであっても鐵士が何を言っているか理解できた。 理解できた、故に、表情を曇らせた。 「私に、選べと言うのですか?貴方と、美南を」 風が吹く。 屋根があろうとも。 そこから空は。 空にあってこそ映える騎士の視界には、あるべき空は入らなかった。
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