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ローゼノム達が塔の1階に降りると、辺りには兵の姿は見えなかった。皆、王城の正面で、紙の鳥たちと戦っているらしい。ローゼノムは、硝煙筒に火を点けると、黄色い煙が立ち上り始めたのを確認して草の上に放り出し、クリスティーナたちに向き直った。
「これで、セレスは救出が成功したことが分かるはずだ」
「えぇ」
3人は、地下水路の入り口である城の東端にある倉庫へと、慎重に城壁の端を歩いていく。
しかし、途中で不意にローゼノムの足が止まった。
「鳥が……!」
王城の正面の方角を見ると、空を舞っていたはずの鳥たちが、コントロールを失って風に飛ばされるように西に流れ始めたのだ。
「おかしい! 後10分は敵を引き付けておく約束だったはず……!!」
ローゼノムが呟くと、クリスティーナが険しい表情になった。
「お兄ちゃんは、どこから鳥を操ってるの?」
「城門の外のはずだが……」
ローゼノムが心ここにあらず、といった風で、真っ青になったので、クリスティーナは口を引き結ぶ。
「落ち着いてちょうだい。お兄ちゃんは、こういう時どうしろって言ってたの」
「もし、危なくなったら、私だけでも逃げろと」
「……そう」
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