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第12章 別れ
セレスが次に目を覚ました時、セレスの目に入ったのは、見知らぬ天井だった。いびつな木の梁は、良く言えば味のある、悪く言えば粗末な、とにかく見慣れないものだった。
「……っっ!!!」
セレスは瞬時に今までの出来事を思い出して飛び起きようとし、身体を駆け抜けた痛みに負けて、またすぐベッドに倒れ込んだ。
「クリス……クリス!! いるのか!?」
セレスは痛みのせいで固く目を瞑ったまま大声で叫んだ。
「ちょっと、起きて早々うるさいわよ! お兄ちゃん!」
クリスティーナは、腰に手を当ててやってきて、セレスを見下ろした。セレスは痛みで涙目になりながら、クリスティーナの顔を見上げる。
「ここはどこだ? ロウ君は?」
「あの人、ロウ君っていうのね? まだ眠ってるわ」
クリスティーナは少し声を低めて答え、セレスの声に驚いてやってきたエステルを安心させるように頷いた。
「ここは、魔女のお婆さんの家よ。ミハラさんっていうの。私たち、街を出たあと崖を登れなくて困っていたんだけど、お婆さんがここに連れてきてくれたの」
「……ロウ君は、無事なのか?」
セレスが不安そうに尋ねると、クリスティーナはちょっと呆れたように鼻を鳴らした。
「ロウ君ロウ君って。そんなに気になるなら見に行けばいいじゃない?」
「……僕が動けると思うのかい?」
セレスは不満そうに口を尖らせたが、クリスティーナは腰に手を当て、すまして答える。
「ミハラさんがよく効く薬を塗ってくれたから、もう大丈夫だって。お兄ちゃんは丈夫なだけが取り柄なんだから」
「でも、まだ痛いよ」
セレスは拗ねたように呟いたが、ゆっくり体を起こそうとすると、今度はそれほどの痛みは感じなかった。これなら何とか歩けそうだ。
「それで、僕たちは何日眠ってたんだ?」
「1週間よ」
クリスティーナが答えると、セレスは眉間にしわを寄せた。
「1週間も、ロウ君は目を覚まさないのか……」
「……ねぇ、あの赤い光、魔力の光だったんでしょう? あの人……何者なの?」
クリスティーナが真剣に問いただすと、セレスは少し考えてから、呟いた。
「彼は……魔王さ」
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