森で殺したアイツとバーサス

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バーンズは無骨で陰険な印象を持つが、話せば、それなりの学や、他者に対し、配慮のある姿勢を多く見せ、監獄内での世話役のような役職を担っている事も納得できた。 元軍役という実力を活かし、政治犯や強面が大挙する監獄内を しっかりとまとめ上げ、囚人達はおろか、看守達でさえ、一目置いている様子。 そのおかげで一緒に行動する私にも恩恵に近い、監獄内での、生活改善が設けられた。 バーンズが隠したスプーンの件は、疑問こそ残ったが、特に尋ねる事はしなかった。 向こうからも見返りや要求、指示を求められる事もなく、良好な関係が続いた。 いや、正確には一つだけあった。 ある日の事、獄舎で彼が仕入れた書物を読む私に彼が現れ、いつもながらの低い声で 尋ねた。 「先生はよ?塀の外の元同僚さん達は付き合いがあるのかぃ?」 「ああ、まぁな。時々、面会に来る奴が1人、二人いるくらいだが。」 一瞬、嫌な予感がしたが、続く言葉に安心する。 「そうかぃ…あのよ、いや出来たらで全然構わねぇんだがよ。ある人の暮らしっつーか、 生活状況を調べてほしいんだよ。勿論、違法って事はわかってるけどな。」 長い戦乱が終わり、あらゆる勢力が共存する社会。法が整備され、安定した情勢とはいえ、 魔術を使った呪法や詐欺、最悪の場合、殺人に繋がるケースも、今だにある昨今。 どんな事件に繋がるかわからないため、市民登録された者の個人情報は国が管理し、 一般人が閲覧や確認をする事は禁止されている。 そして私が所属していた部署はそれを管理する所であり、同僚達に確認すれば、 すぐに知る事が出来た。 少し考えたが、バーンズの真剣な様子に押され、私は承諾する。彼への恩義を返すためも あった。 調査対象は“シェアリー”という未亡人の女性、夫は事故で無くなっており、今は2人の 子と町外れの一軒家に暮らしている。 戦乱が終わり、福利制度もしっかりとしてきた昨今だが、女1人で子供二人を養うのは 難しいが、彼女は務めにも出ず、慎ましく暮らし、幼い子供達の育児に専念している様子。 友人の報告では、夫が残した財産が相当ある様子だが、国に治める税法には該当しない モノであり、取り立てを強硬する事も出来ないので、今後も安定した暮らしを送れるだろうとの見解だった。  
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