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以上を報告するとバーンズの表情に、一瞬、安らぎのような表情が浮かび、彼と関係のある
女性なのかという疑念を抱かせたが、敢えて尋ねる事はしなかった。
3日が経った頃、再び彼が獄舎に尋ねてきた。私は何か予感めいたモノを感じる。
そして、それは現実のものとなった…
「先生には世話になった。お礼って程じゃないんだが、署長に特赦をお願いしておいた。
模範囚だから、半年で出られる。後はアンタ次第だ。」
この男は一体、どれだけの力を持っているのだろう?
礼を言うのも忘れ、呆然とする私に、バーンズは言葉を続ける。
「ここまで言えば、わかると思うが、俺は罪を犯して、ここに入った訳じゃねぇ。
しいて言うなら、戦うための準備のためって所だ。それがようやく整った。
だから、最後に、アンタに聞いてほしい。俺の話をな。」
ぶっきらぼうな様子で、バーンズは語り出す。それは驚くべき内容のモノだった…以下に記すのは、彼の体験だ…
監獄に入る前、バーンズは“防人”として、この国の周辺地域の警備隊長を務めていた。
異種族や国家間の戦乱で腕を磨いた彼の戦歴だからこその役職だが、
争いが終わった平和な時代、戦に精通する武人は社会にとって、無用な存在であり、給与や待遇はますます悪くなる一方だった。国お抱えの騎士団でさえ、財政難から、解体を余儀なくされる昨今…彼等のような兵卒上がりでは、待遇なんてもの、無きにしもあらずだ。
そんな中でも、バーンズは部下達の面倒をしっかりと見て、かつての戦友達の職業の斡旋や仕事の開拓に尽力してきた。この辺りが、監獄内での彼の影響力に関係しているのだろう。
バーンズ本人としては出世に興味はなく、あくまで“現場の仲間達を支える”存在で満足だった。異変が起きたのは半年前の事だ…
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