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衣笠秋乃は狙われている。その1
「はい。という訳で、転校生のーー」
「星宮龍之介だ! みんな、よろしく頼む!」
担任の女性の言葉を遮り、威勢のいい自己紹介が教室に響き渡る。
全員が口々に騒ぎ出す。よろしく、という声や、黄色い歓声もちらほら。
担任は困ったように、うなだれる。
「んー、まあ、いっか。星宮君、空いてる席に座ってね」
「はい、先生」
困り顔の教師にキチンと返事をしつつ、龍之介は椅子に腰かけた。
「はい、それでは朝のホームルームを始めます」
「起立、礼」
全員が慌ただしく起立、礼をし、着席する。
「はい、では今日は……スポーツテストがあります」
腕の見せ所だと意気込む者、勘弁してくれと落胆する者。反応は様々だ。そして、当の龍之介はというと……
「スポーツテストか、腕が鳴るねぇ……」
満面の笑みで腕を回す。この少年は思い切り前者側なのだった。
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