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雪の日
「わぁ。雪だあ」
彼女は教室の窓から身を乗り出して言った。
「危ないぞ。ってかおまえ、もうすぐ高3だろー?
雪ぐらいでそんなにはしゃぐなって」
「だって積もるかもしれないでしょ」
そしたら雪だるま作ろうよ!
彼女はそう言うと俺に笑いかけた。
俺も彼女の横に立ち、校門に向かって歩いていく生徒達を見下ろす。
「この降りかたじゃ積もらないよ」
校門を目指す黒い塊たちは皆、空へ手を掲げたり走り回ったりとそれぞれに雪を楽しんでいる。
その中に1歳年上の兄貴の後ろ姿を見つけた。
まずい。
「そんなことより早く掃除終わらせようぜ!
じゃないと帰る頃には雪、やんでるかもしんないぞ」
俺は窓辺から彼女を引き離そうと、彼女の手から伸びるほうきを引っ張った。
しかし彼女は動こうとしない。
「おいっ」
彼女は笑顔のまま兄貴をじっと見ていた。
兄貴の横には女がいた。
彼女に見せないように窓辺から引き離そうとしたが遅かったらしい。
「お兄さんいるね」
「お、おう、そだな!ほら掃除するぞ!」
彼女は俺を見て寂しそうに笑った。
兄貴の横にいた女については何も言わなかった。
それが一層悲しみを表現しているようで苦しくなった。
なんで兄貴なんだよ。
俺じゃダメなのかよ。
俺だったらおまえにそんな悲しそうな顔させないのに。
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